2020/3/2 改訂 目次へ 表紙へ |
原データ 東北大学付属図書館狩野文庫画像データベース |
絵本譬喩節 「上巻へ」 「中巻へ」 |
(1) 絵本譬喩節 下 |
(2) 枯木に花 灰も かれ木に ふりかへて 殿のおんめに とまる花哉 |
1○枯木に花 衰えたものが再び栄えることのたとえ。 祖父(爺)むさい (じじむさい) 年寄りくさい。 花咲爺 昔話の一。枯木に花を咲かせたという 翁のお伽噺。愛犬報恩の物語に、欲の深い老人 の物真似失敗談を加えたもの。室町末か江戸初期 頃に成る。 |
*挿絵は花咲爺が枯れ木に登り、灰をまいて枯れ 木に花を咲かせている図。 |
勘定疎人(かんじょうのうとんど)→ 疎人(うとんど・勘定、狂歌)花島平蔵) 江中期江戸深川土橋の狂歌作者、徳和歌後万載/才蔵集/新玉集/俳優風などに入。 |
(3) おか目 八もく 一富士二鷹 ちる花や しろ石かちの 山下に 風をしのふの 岡目八もく 一夜検校 腹唐秋人 今買ふた 夷大黒 箕に そふて げに 浅草の 市や けんげう |
*一夜検校(いちや‐けんぎょう) (1)江戸時代、千両の金を納めて、にわかに検校にな ったもの。 (2)転じて、にわかに富裕となること。また、その人。 *えびす(恵比須・夷)七福神の一。商売繁昌の神と して信仰される。 *大黒は大黒天。七福神の一。頭巾をかぶり、左肩に 大きな袋を負い右手に打出の小槌を持ち、米俵を 踏まえる。わが国の大国主命と習合して民間信仰 に浸透、えびすと共に台所などに祀られるに至る。 *箕(み)穀類をあおって殻・塵などを分け除く農 具。 市やけんげう 市や喧業?と一夜検校。 |
○おかめ‐はちもく(傍目八目) 他人の囲碁を傍で見ていると、実際に対局してい る時よりよく手がよめるということ。 転じて局外にあって見ていると、物事の是非、 利・不利が明 らかにわかること。 *かち(勝ち)とかち(徒歩) *忍の岡 上野東叡山の総称。忍の岡と岡目の 岡をかける。 *山下 上野山下のこと。東叡山寛永寺のふもと 一帯をさす俗称。 *挿絵 法服に頭巾を被った僧侶と町人風の男との 囲碁の対局。僧侶の白石が優勢、黒石の男が劣勢 の様子。傍目のひとりは小坊主。左頁の坊主頭の あんまが客の肩と腕をもんでいる。側に杖と草 履。縁側に猫と手水鉢。 |
一富士二鷹(いちふじにたか) 三尺庵。通称藤田甚助。江戸橋本町に住す。四方赤良社中。 腹唐秋人(はらからの-あきんど)。は中井董堂( なかい-とうどう)の狂歌名 。江戸後期の書家,狂歌師,戯作者。大田南畝門下として狂詩集「本丁文酔(ほんちょうもんずい)」をあらわす。狂歌は大屋裏住門下で本町連に属した。洒落本「狂訓彙軌本紀(いきほんぎ)」がある。江戸出身。戯作名は島田金谷(かなや)。 (1758-1821) |
(4) 河豚ハ喰たし命ハ惜し 唐来三和 河豚くふて 身ハ なきものと おもへとも 雪の降る日に あつくこそなれ 犬も歩けは棒にあたる 正木植長清 ふらふらと あるけばあたり つきあたる 棒だらどのゝ 顔ハ赤犬 |
○犬も歩けば棒に当る 物事を行う者は、時に禍いにあう。また、やって みると思わぬ幸いにあうことのたとえ。 (前者が本来の意味と思われるが、後の解釈が広く 行われる) *ぼう‐だら(棒鱈) 酒に酔った人。なまよい。 役に立たない者。でくのぼう。あほう。 *右頁挿絵は雪降る日魚を咥えて逃げる猫を菅笠簑 姿の行商の魚屋が天秤棒で叩こうとしている。 一方、軒先ではお客が魚屋の小型の鳶口で魚を 吊り上げ品定めをしている。 |
○河豚は食いたし命は惜しし おいしい河豚料理は食いたいが、中毒の危険が あるので食うことをためらう。 転じて、やりたいことがあるのに、危険が伴う ので決行をためらう。 |
唐来参和(とうらい‐さんな)名は三和とも書く。拳の掛け声「トウライ(十の意)」と「サンナ(三)」によるものとされる。 江戸後期の狂歌師、洒落本・黄表紙作者。加藤氏。通称、和泉屋源蔵。武士の出で、後に町人となり、本所松井町の娼家和泉屋に入婿。狂歌は四方赤良の門。洒落本「和唐珍解」、黄表紙「莫切自根金生木(きるなのねからかねのなるき)」など。(1744~1810) 正木植長清 (詳細不明) |
(5) 腰掛ばくち 無篭文裏 遠山の こしかけばくち はる霞 二すぢ 三すぢ たちきへぞする 薮に 惣領世次 雪の日に 母のねだりし筍は やぶに まくハ(馬鍬)と これや孟宗 |
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(6) 凡夫さかんに 神祟りなし 市仲住 つめに火を さかんに燈す 凡夫には 貧乏神の たゝりたに なし 人をのろ(呪)ハヽ 穴二ツ 高利苅主 人をのろはゞ 二ツなる 穴は 若衆と 女なりけり |
丑の刻参り 丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御 神木に憎い相手に見立てた藁人形を毎夜五寸釘 で打ち込むという、日本に古来伝わる呪術の一 種である。 白装束を身にまとい、顔に白粉を塗り、頭に五 徳(金属製のものなら何でもいいという説もあ る)をかぶってそこにロウソクを立て、一本歯 の下駄を履き、神社の御神木に憎い相手に見立 てた藁人形を毎夜五寸釘で打ち込むというもの が用いられる。 また、丑の刻参りをしている者の姿を他の人に 見られると、参っていた人物に呪いが跳ね返っ て来ると言われ、目撃者も殺してしまわないと ならないと伝えられる。Wikipedia |
*挿絵は女は丑の刻参りの図。女が頭に蝋燭を立て、 手に金槌を持っている。木立の中に社の屋根。 ○凡夫さかんに神祟りなし つまらない者でも勢いの乗っているときは、 たとえ神仏でもどうすることも出来ない。 ○爪に火をともす 蝋燭(ろうそく)のかわりに爪に 火をともすほど過度に倹約をするたとえ。 爪に火を盛んに灯す凡夫には貧乏神の祟りだになし ○人を呪わば穴二つ 他人をのろって殺そうとすれば、 自分もその報いで殺されるから、葬るべき穴は二 つ必要なことになる。人に害を与えれば、結局自分 も同じように害を受けるものだということ。 |
市仲住 (詳細不明) 高利苅主 (詳細不明) |
(7) 噂をいへば蔭がさす 古々路有武 弓張の 頃より毎夜 噂して もちに大きな 月かげそさす 蛙のつらへ水 恥しらば 井出の隣の たゞの里 蛙のつらへ 水のかけひ哉 鱠盛方 |
○蛙の面(つら)に水 (厚かましくて)どんな仕打ちにあ っても平気でいるさま。 しゃあしゃあしていること。 井手 京都府南部、綴喜(つづき)郡にある町。 井手の左大臣 橘諸兄の別館があった。(歌枕)井手の下帯 (山城国井手に行った男が、少女に帯を解いて与えた のち、年を経てそこでめぐりあって契りを結んだとい う大和物語による伝説から) 別れた男女が再びめぐり あって契りを結ぶこと。 *かけひ(筧・懸樋)。かけい。 |
○噂をすれば影がさす ある人の噂をすると当人が そこに現れるものだ。 *弓張月 弓の弦を張ったような形をしている月。 上弦・下弦の月をいう。 *もちに大きな月 望月のもちと餅つきをかける。 ○餅に搗(つ)く もてあます。処置に困る。 *右頁挿絵はうわさ話をする女達とそれを立聞き する女。左頁は幼子を背負う女親と子供。 子供が柄杓で蛙に水をかけていて、 「蛙の面(つら)に水」を表している。 |
古々路有武 (詳細不明) 鱠盛方 奈万須盛方(なますの-もりかた)(?-1791)江戸中期の狂歌師。江戸日本橋馬喰町で旅人宿をいとなむ。宿屋飯盛にまなび,伯楽連に属した。姓は遠藤。通称は京屋弥市。屋号は山城屋。 |
(8) 女郎の 首たけに はまらバ しれん 川竹の 流のそこの 底の 蛭子高盛 百貫のかた(形)に 笠一ツかい 支江笹丸 百貫の かたミに たつた一文字 女郎買の 古き あミ笠 |
○百貫の形に笠一蓋(いっかい) 百貫の貸金に対して笠1つですますという諺。 ○千貫のかたに編み笠一蓋(いちがい)金千貫貸して、 その抵当に編み笠一つ取ったという意味。 与える所ばかり多く、得る所が非常に少ないたとえ。 *一文字笠 勾配のない菅笠。武士・町人ともに 用いた。 丸い紙を真中から二つ折にしたように頂きが一文 字(一直線)になった笠。 一文字屋 京都島原中之町にあった遊女屋。 |
○女郎に誠あれば晦日(みそか)に月が出る ○女郎の誠と卵の四角 女郎が浮れ男に誠意を持って接する道理がない ことをうたった俗謡。 ○川竹の流れの身浮き沈みの定めなき遊女の身の上。 *挿絵は見詰め合う一文字笠の男と遊女。 |
蛭子高盛 (詳細不明) 支江笹丸 (詳細不明) |
(9) 足元から鳥 鹿津部真顔 あしもとを 鳥の たつたる せわしさハ とつたか 銭まうけ ゆへ 犬の河端 下毛酒桶数有 河端の 風に 吹ちる 犬さくら 岸行船の ほへかゝるなり |
○犬の川端歩き 犬が、川端を食べ物をあさりながら歩いても、 何も得られないように、何か食べたいと思いながら も何も食べられずに素通りして歩いていくこと。 金銭を所持しないで店頭をぶらつくことのたとえ。 いぬ桜 バラ科サクラ属の落葉高木。山地に自生。 サクラ に類するがサクラらしくないのでこの名がある。 *挿絵は犬桜満開の下、鷹を手にする鷹匠、手代、 犬を連れた侍。足元から飛び立つ小鳥。 雉かもしれない。それを狙う鷹匠。 |
○足下から鳥が立つ 急に思い立ったように物事を 始める。 身近な所で突然意外なことが起きるさまをいう。 *兄鷹(しょう)→鷹(雌の鷹を弟鷹(だい)とい うのに対していう。 雄の鷹。とつたかしょう 捕ったか「しょう」 (雄の鷹)あるいは兄(え)弟(と)の「え」 から兄鷹(えたか)と読ませるのであろうか。 江戸語辞典には「捕ったか見たか」という言い方 があり、その言葉をひとひねりして「取ったか 得たか」にしたものか。 |
鹿津部真顔( しかつべの-まがお)1753-1829江戸中期-後期の狂歌師。江戸数寄屋橋門外で汁粉屋をいとなみ,恋川好町の名で戯作をかく。のち四方赤良にまなび,四方真顔の名で狂歌の判者となる。俳諧歌をとなえ,宿屋飯盛と文化・文政期の狂歌壇を二分した。姓は北川。通称は嘉兵衛。編著に「類題俳諧歌集」など。 下毛酒桶数有 (詳細不明) |
(10) 画工 喜多川歌麿図 狂歌集并絵本類追々新 板指出候間御求御らん可 被下候已上 永壽堂蔵板絵本目録 絵本武将一覧 全三冊 同 吾妻袂 全三冊 同 武将記録 全三冊 同 八十宇治川 全三冊 同 駿河舞 全三冊 同 譬喩節 全三冊 同 詞の花 全三冊 同 吾妻遊 全三冊 同 天の川 全二冊 寛政九巳 正月 浪華書林 平野町御霊筋 明石屋伊八板 |