2020/3/2 改訂 目次へ |
原データ 東北大学付属図書館狩野文庫画像データベース |
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(1) 絵本譬喩節 中 |
(2) 皿に桃 大原ざこ祢 ミづミづとした かんばせ(顔)の さらに もゝ 見へぬなり |
*西王母 中国に古く信仰された女仙。西方の崑崙 (こんろん)山に住んでいたという。周の穆(ぼく) 王が西に巡狩して崑崙に遊び、西王母に会い、帰 るのを忘れたという。また、漢の武帝が長生を願 っていた際、西王母は天上から降り、仙桃七顆 与えたという。西王母の庭には、三千年に一度 実のなる桃があり、その桃を食べると永遠に年 をとらないといわれる。 |
*「皿に桃」 「更に百千歳」 もも‐ち‐とせ(百千歳) ちとせ(千歳) *挿絵は西王母と召使い。 |
大原ざこ祢 (詳細不明) |
(3) 田を行も畔をゆくも 荷造早文 田を行も 畔ゆく人も 早乙女の 同じ植時 短気ハそん気 菜種蝶羽 気みぢかハ びんづる そんじや とにかくに むねを さすつて くらせ 世中 |
○短気は損気 (「損気」は短気に語呂を合せて作った語) 短気を起すと損をする。 ○短気は未練の元(もと・はじめ) 短気を起こせば、後で後悔 して、未練の振る舞いをする原因になる。 ○短気は身を亡ぼす腹切刀 短気を起こせば自滅を招くということ。 *びんずる(賓頭盧)〔仏〕(梵語) 仏弟子。 十六羅漢の一。神通力をもてあそんだとして釈尊に 呵責され涅槃に入ることを許されず、西瞿陀尼州 (さいくだにしゆう)で衆生救済につとめたという。 日本では本堂の外陣に置いてこれを撫でて病気の 平癒を祈る。なでぼとけ。おびんずるさま。 尊者と損じゃをかける。 |
○畦から行くも、田から行くも同じ あぜ道を通って行くのも田を踏んで行っても行き 着くところは同じである。手段や方法が違ってい ても結果は同じになる場合のたとえ。 *挿絵 思案顔で歩く若衆と女。 駆落ちか。 |
荷造早文 (詳細不明) 菜種蝶羽 (詳細不明) |
(4) 百日説法屁一ツ 調面畏 百日に とひたる法ハ しやらくさく(洒落臭く) ぢゝや ばゝ をは たま(騙)し すかし屁 阿弥陀の光も銭次第 宇和空也 光ある 弥陀も くわんけ(勧化)の 銭次第 いちもん 一家 すくひ 給へや |
○阿弥陀の光も金次第 ○阿弥陀も銭ほど光る 阿弥陀仏でも賽銭を多く奉るものに利益を多く与 える。世の中は万事金次第であるの意。 *かんけ(勧化) (1)仏の教えをすすめること。 (2)仏寺の建立・修復などのために、人々に勧め て寄付を募ること。転じて金品の寄付を勧める こと。勧進。 *いちもん一家 「一門一家」 「一文で一家を救い給えや。」 |
1○百日の説法屁一つ 長い間のまじめな苦労もわずかばかりの しくじりであっけなく無駄になることの たとえ。 *挿絵は寺の説法会。僧侶の前に貴賤、 男女の別なく大勢の聴衆。 爺、婆をばだましすかし(騙し賺し)へ (透かし屁)。 |
調面畏 (詳細不明) 宇和空也(詳細不明) |
(5) 鰯の頭も信心から 信心の門に さしたる 赤いわし 鬼も おそれミ おそれミ申 田原船積 鬼の留守にせんたく 西の海へ おひかへしたる 鬼の留守 あらひ 直して あら玉の春 人まね小まね |
○鬼の居ぬ間に洗濯 遠慮する人のいない間に、命 の洗濯をする。思う存分心をくつろげることに いう。 ○西海へさらり 厄払いのことば。悪事・凶事・災厄 などを払いのけて西の海へ流してしまう意。 *挿絵は節分の豆まき。 節分行事 立春の前日の称。この日の夕暮、 柊(ひいらぎ)の枝に鰯(いわし)の頭を刺したもの を戸口に立て、鬼打豆と称して炒った大豆をまく 習慣がある。挿絵にも左柱にヒイラギの枝あり。 追儺(ついな) |
○鰯の頭も信心から 鰯の頭のようなつまらないものでも、信仰する と、ひどくありがたく思える。 *赤鰯 糠(ぬか)をまぶして塩漬にし、または乾 した錆色(さびいろ)の鰯。 追儺(ついな)のときにはヒイラギに添えて戸口 に挿した。→ 節分行事 |
田原船積 ?-1820江戸時代後期の狂歌師,戯作者。江戸小網町の船積問屋の主人。姓は大竹。通称は高浜屋三左衛門。別号に田原船積,大湊舎。俳号は法六庵寛哉。狂歌集に「夷曲(いきょく)ことし俵」、黄表紙に「伊呂波短歌」。 人真似小まね 狂歌師。通称真田弥右衛門。江戸大久保 百人町の人。四方側の社中。 |
(6) 転ぬ先の杖 百喜斎 鳩の杖 かねて つかせて 翁草 これも こしより 霜の用心 楽ハ苦のたね くハ楽のたね 窪俊満 丹誠の 黄きくの いろハ こかねにて げに 土かひし |
○苦は楽の種 現在の苦労は後日の幸福のもととなる。 「楽は苦の種、苦は楽の種」 *土かへし 培へし (培う) 草木の根に土をかけて育てる。 ここでは土をかえす鍬(くわ)と、苦は楽の種の 苦はとかけている。 *挿絵右頁は庭先で菊の花の手入れする女性二人。 花壇から鼠か土竜の死骸を箸でつまんで子供に 見せている。左頁は怖がる子供と女性。縁側で 眼鏡をかけた老人も何事かとのぞく。 |
○転ばぬ先の杖 失敗しないように、前以て用意を しておくこと。 *鳩の杖 鳩は食する時むせない鳥であるとし、こ れにあやかるため、老人用の杖のにぎりの部分に 鳩の形をつけたもの。はとづえ。きゅうじょう。 *翁草 キンポウゲ科の多年草。山野の乾燥した 草地に生え、全体が白色の長毛で覆われるので この名がある。 (2)菊の異称。 こし 枯死 腰 鳩の杖 翁草 霜 下 下半身 |
百喜斎森角(詳細不明) 窪俊満(くぼしゅんまん) 江戸時代中期-後期の浮世絵師。宝暦7年生。楫取魚彦(かとり-なひこ)に画と歌をならい、,北尾重政の門にはいる。左利きで尚左(しょうさ)堂とも号し、美人画にすぐれた。石川雅望に狂歌をまなび,狂歌・摺物・版本の挿絵も多い。南陀伽紫蘭(なんだかしらん)・塩辛房(しおからぼう)の号で、戯作・俳諧にも才を発揮。 |
(7) 猪食たむくひ 大屋裏住 ししくつた むくひに できし 此子をば 瓜坊さんと ひとの いふらん 案じるより産が安ひ 鹿嶌尾鳥 取あぐる ばゝか 仕事の ミづき 苧ハ あんじる よりも うむの やすさよ |
*瓜坊(うり‐ぼう) イノシシの子。 甜瓜猪(まくわじし)ともいう。うりんぼう。 ○案ずるより産むが易い 事前にあれこれ心配する よりも、実際にやってみると案外たやすいことに いう。 *苧(お)麻の古名。麻・カラムシの茎の周辺部 の繊維からつくった糸。 *右頁挿絵 夜、杖を持ち笛を吹く盲人の按摩。 袖頭巾(そでずきん・おこそずきん)を被る若 い女と提灯を持つ中年女。挟箱(はさみ‐ばこ) を背負う男とその前を歩く侍。店の看板には思わ せ振りな文字が並ぶ。 按摩は盲人の生業で鍼治(しんち)と灸点 (きゅうてん)も兼ねた。小笛を吹いて町を流し て歩く振りの按摩(流しの按摩)と店を開く按摩 があった。 |
○獣食った報い 禁じられた獣肉をこっそり食べ、いい思いをした 埋め合わせとして、当然受けなければならない報 いのこと。また、悪い事をしたために受ける報い のこと。 猪を食った(=不義・密通した)ため、できたこの 子を世間の人は、猪の子ではなく「瓜坊(=不義の 子。密通してできた子。 親に似ぬ子)」と言うだ ろう、というのが裏の意。 *見世の看板 中条流 産婦人科の一派。江戸時代には堕胎を業と するもの多く、川柳など戯文学の好題材となる。 朔日丸(ついたち‐がん) 女が毎月朔日に飲めば孕(はら)まない といわれた丸薬。江戸四つ目屋発売。 なかし (ながし) 堕胎屋。 |
大屋裏住(おおや‐の‐うらずみ) 江戸後期の狂歌作者。大家を家業としたことからの号。手柄岡持・酒上不埒らの属した本町連を主宰。江戸狂歌長老の一人。作「狂歌秋の野良」など。(1734~1810) 鹿嶌尾鳥 (詳細不明) |
(8) 寝耳へ水 鳥渡一葉 ほとゝきす 寝耳へ水の 有明に 月ハかたふく 茶わん かとミる 烏ハ色の 黒には憎まれぬ 錦出今利 ほのくらき 烏の色ハ にくからで ひらく大門口の にくさよ |
○烏は色の黒には憎まれぬ 生まれつきの外形はしかたがないと見られるが、 口が悪いのは本人の不注意として憎まれることを いう。 *大門口(おおもん‐ぐち)吉原遊郭の大門のある 入口。 大門は毎朝未明に開けられ夜四ツ(10時)に閉 められた[引け四ツ]。それ以後はくぐり戸から。 明六ツ午前5時には大門は開き泊まり客は帰る。 泊まり客を見送った遊女たちはもう一眠りする。 |
○寝耳に水 不意の事が起って驚くことのたとえ。 ○ほとときす鳴きつるかたをなかむれは たたあり明の月そのこれる 千載集巻三夏 徳大寺実定 (右大臣) *挿絵 吉原遊郭の夜明け。遊女と客。カラス二羽が飛 んでいる。ほの暗い烏の色は憎らしくないが、 開く廓の大門口が憎い。 |
鳥渡一葉 (詳細不明) 錦出今利 (詳細不明) |
(9) 牛ハ牛づれ 御鬧未吉 いつ 見ても おはらの たゝぬ つき合に 角文字ハ なき 牛 つれの里 |
*角文字 ひらがなの「い」の字を牛の角の形に見立てゝ 「牛の角文字(角文字)」と呼んだ洒落。 「い」のつく文字「怒り・啀み・諍い・悪戯・・・ 牛文字の牛と牛連れの牛をきかす。 絵本吾妻遊 牛の角文字絵双紙屋HP 徒然草 六十二段 |
○牛は牛づれ 馬は馬づれ 類を同じくする者が相伴うことのたとえ。 同類のもの、似たもの同士は自ら集まるということ。 また、身分相応の者が集まれば巧くゆくものだとい うこと。 *おはら おおはら(大原)(オハラとも) 京都市左京 区(もと愛宕おたぎ郡)の一地区。 大原にお腹をかけてお腹も立たない付き合い。 大原女は大原の里から黒木や木工品などを頭にのせ 京都の町に売りに来る女。黒木売。おおはらめ。 *挿絵は黒木を積んだ牛を引く大原女達の行列。 |
御鬧未吉 (詳細不明) |