2020/3/2 改訂

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絵本(えほん) 譬喩節(たとえのふし)   
Ehon tatoenofushi [picture book]

「中巻」
喜多川(きたがわ) 歌麿(うたまろ)  画  
頭 光(つぶりのひかる) 序

 浪華 明石屋伊八板 
  寛政九年(1797年)

原データ 東北大学付属図書館狩野文庫画像データベース
繪本譬喩節



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(1)
絵本譬喩節  中




(2)
皿に桃
   大原ざこ祢
 ミづミづとした
 かんばせ
(顔)の
 西王母(せいおうぼ)
 さらに もゝ
 千
(ち)とせと
 見へぬなり
*西王母 中国に古く信仰された女仙。西方の崑崙
 (こんろん)山に住んでいたという。周の穆(ぼく)
 王が西に巡狩して崑崙に遊び、西王母に会い、帰
 るのを忘れたという。また、漢の武帝が長生を願
 っていた際、西王母は天上から降り、仙桃七顆
 与えたという。西王母の庭には、三千年に一度
 実のなる桃があり、その桃を食べると永遠に年
 をとらないといわれる。

*「皿に桃」 「更に百千歳」
 もも‐ち‐とせ(百千歳) ちとせ(千歳)


*挿絵は西王母と召使い。
大原ざこ祢  (詳細不明)



(3)
田を行も畔をゆくも
  荷造早文
 田を行も

  畔ゆく人も
 早乙女の
 
早稲(わせ)も
  
晩稲(おくて)も
 同じ植時

短気ハそん気
    菜種蝶羽
 気みぢかハ
 びんづる そんじや
 とにかくに
  むねを さすつて
   くらせ 世中
○短気は損気
 (「損気」は短気に語呂を合せて作った語)  
 短気を起すと損をする。
○短気は未練の元(もと・はじめ)
  短気を起こせば、後で後悔
  して、未練の振る舞いをする原因になる。
○短気は身を亡ぼす腹切刀 
 短気を起こせば自滅を招くということ。

*びんずる(賓頭盧)〔仏〕(梵語) 仏弟子。
 十六羅漢の一。神通力をもてあそんだとして釈尊に
 呵責され涅槃に入ることを許されず、西瞿陀尼州
 (さいくだにしゆう)で衆生救済につとめたという。
 日本では本堂の外陣に置いてこれを撫でて病気の
 平癒を祈る。なでぼとけ。おびんずるさま。
 尊者と損じゃをかける。

○畦から行くも、田から行くも同じ 
 あぜ道を通って行くのも田を踏んで行っても行き
 着くところは同じである。手段や方法が違ってい
 ても結果は同じになる場合のたとえ。




*挿絵 思案顔で歩く若衆と女。 駆落ちか。
 荷造早文 (詳細不明)

 菜種蝶羽
  (詳細不明)



(4)
 百日説法屁一ツ
     調面畏
 百日に
  とひたる法ハ
 しやらくさく
(洒落臭く)
 ぢゝや ばゝ をは
 たま
(騙)し すかし屁

 阿弥陀の光も銭次第
    宇和空也
 光ある  弥陀も
 くわんけ
(勧化)の
 銭次第
 いちもん 一家
 すくひ 給へや
 ○阿弥陀の光も金次第
 ○阿弥陀も銭ほど光る

 阿弥陀仏でも賽銭を多く奉るものに利益を多く与
 える。世の中は万事金次第であるの意。
*かんけ(勧化)
(1)仏の教えをすすめること。
(2)仏寺の建立・修復などのために、人々に勧め
 て寄付を募ること。転じて金品の寄付を勧める
 こと。勧進。

*いちもん一家 「一門一家」
 「一文で一家を救い給えや
。」
1○百日の説法屁一つ 
 長い間のまじめな苦労もわずかばかりの
 しくじりであっけなく無駄になることの
 たとえ。

*挿絵は寺の説法会。僧侶の前に貴賤、
 男女の別なく大勢の聴衆。

 爺、婆をばだましすかし(騙し賺し)へ
(透かし屁)
。
調面畏 (詳細不明)




 宇和空也(詳細不明)


 



(5)
鰯の頭も信心から        
 信心の門に
 さしたる
 赤いわし
 鬼も おそれミ 
     おそれミ申
  
 田原船積

鬼の留守にせんたく
 西の海へ
 おひかへしたる
 鬼の留守
 あらひ 直して
 あら玉の春
   
 人まね小まね
○鬼の居ぬ間に洗濯 遠慮する人のいない間に、命
 の洗濯をする。思う存分心をくつろげることに
 いう。

○西海へさらり 厄払いのことば。悪事・凶事・災厄
 などを払いのけて西の海へ流してしまう意。


*挿絵は節分の豆まき。
 節分行事 立春の前日の称。この日の夕暮、
 柊(ひいらぎ)の枝に鰯(いわし)の頭を刺したもの
 を戸口に立て、鬼打豆と称して炒った大豆をまく
 習慣がある。挿絵にも左柱にヒイラギの枝あり。
 追儺(ついな)
○鰯の頭も信心から 
 鰯の頭のようなつまらないものでも、信仰する
 と、ひどくありがたく思える。

*赤鰯 糠(ぬか)をまぶして塩漬にし、または乾
 した錆色(さびいろ)の鰯。
 追儺(ついな)のときにはヒイラギに添えて戸
口
 に挿した。→ 節分行事
田原船積
 ?-1820江戸時代後期の狂歌師,戯作者。江戸小網町の船積問屋の主人。姓は大竹。通称は高浜屋三左衛門。別号に田原船積,大湊舎。俳号は法六庵寛哉。狂歌集に「夷曲(いきょく)ことし俵」、黄表紙に「伊呂波短歌」。


人真似小まね
狂歌師。通称真田弥右衛門。江戸大久保 百人町の人。四方側の社中。



(6)
転ぬ先の杖
    百喜斎
 鳩の杖 
 かねて 
 つかせて
 翁草
 これも 
 こしより
 霜の用心

 楽ハ苦のたね
   くハ楽のたね
     窪俊満
 丹誠の
 黄きくの
 いろハ 
 こかねにて
 げに 土かひし
  鍬(くわ)楽のたね
○苦は楽の種 現在の苦労は後日の幸福のもととなる。
  「楽は苦の種、苦は楽の種」
*土かへし 培へし (培う) 
 草木の根に土をかけて育てる。

 ここでは土をかえす鍬(くわ)と、苦は楽の種の
 苦はとかけている。


*挿絵右頁は庭先で菊の花の手入れする女性二人。
 花壇から鼠か土竜の死骸を箸でつまんで子供に
 見せている。左頁は怖がる子供と女性。縁側で
 眼鏡をかけた老人も何事かとのぞく。
○転ばぬ先の杖 失敗しないように、前以て用意を
 しておくこと。
*鳩の杖 鳩は食する時むせない鳥であるとし、こ
 れにあやかるため、老人用の杖のにぎりの部分に
 鳩の形をつけたもの。はとづえ。きゅうじょう。

*翁草 キンポウゲ科の多年草。山野の乾燥した
 草地に生え、全体が白色の長毛で覆われるので
 この名がある。
 (2)菊の異称。
 こし 枯死 腰
 鳩の杖 翁草
 霜 下 下半身

百喜斎森角(詳細不明)


窪俊満(くぼしゅんまん)
江戸時代中期-後期の浮世絵師。宝暦7年生。楫取魚彦(かとり-なひこ)に画と歌をならい、,北尾重政の門にはいる。左利きで尚左(しょうさ)堂とも号し、美人画にすぐれた。石川雅望に狂歌をまなび,狂歌・摺物・版本の挿絵も多い。南陀伽紫蘭(なんだかしらん)・塩辛房(しおからぼう)の号で、戯作・俳諧にも才を発揮。



(7)
 猪食たむくひ
    大屋裏住
 ししくつた
 むくひに できし
 此子をば
 瓜坊さんと
 ひとの いふらん

 案じるより産が安ひ
    鹿嶌尾鳥
 取あぐる
 ばゝか 仕事の
 ミづき 苧ハ
 あんじる 
  よりも
 うむの
  やすさよ

*瓜坊(うり‐ぼう) イノシシの子。
 甜瓜猪(まくわじし)ともいう。うりんぼう。

○案ずるより産むが易い 事前にあれこれ心配する
 よりも、実際にやってみると案外たやすいことに
 いう。

*苧(お)麻の古名。麻・カラムシの茎の周辺部
 の繊維からつくった糸。


*右頁挿絵 夜、杖を持ち笛を吹く盲人の按摩。
 袖頭巾(そでずきん・おこそずきん)を被る若
 い女と提灯を持つ中年女。挟箱(はさみ‐ばこ)
 を背負う男とその前を歩く侍。店の看板には思わ
 せ振りな文字が並ぶ。
 按摩は盲人の生業で鍼治(しんち)と灸点
 (きゅうてん)も兼ねた。小笛を吹いて町を流し
 て歩く振りの按摩(流しの按摩)と店を開く按摩
 があった
。
○獣食った報い
 
禁じられた獣肉をこっそり食べ、いい思いをした
 埋め合わせとして、当然受けなければならない報
 いのこと。また、悪い事をしたために受ける報い
 のこと。

 猪を食った(=不義・密通した)ため、できたこの
 子を世間の人は、猪の子ではなく「瓜坊(=不義の
 子。密通してできた子。 親に似ぬ子)」と言うだ
 ろう、というのが裏の意。
*見世の看板
 中条流 産婦人科の一派。江戸時代には堕胎を業と
 するもの多く、川柳など戯文学の好題材となる。

 朔日丸(ついたち‐がん)
 女が毎月朔日に飲めば孕(はら)まない
 といわれた丸薬。江戸四つ目屋発売。

 なかし (ながし) 堕胎屋。
大屋裏住(おおや‐の‐うらずみ)
江戸後期の狂歌作者。大家を家業としたことからの号。手柄岡持・酒上不埒らの属した本町連を主宰。江戸狂歌長老の一人。作「狂歌秋の野良」など。(1734~1810)




鹿嶌尾鳥 (詳細不明)



(8)
 寝耳へ水
   鳥渡一葉
 ほとゝきす
 寝耳へ水の
 有明に
 月ハかたふく
 茶わん
  かとミる

烏ハ色の
 黒には憎まれぬ
   錦出今利
 ほのくらき
 烏の色ハ
 にくからで
 ひらく大門口の
 にくさよ
○烏は色の黒には憎まれぬ
 生まれつきの外形はしかたがないと見られるが、
 口が悪いのは本人の不注意として憎まれることを
 いう
。
*大門口(おおもん‐ぐち)吉原遊郭の大門のある
 入口。

 大門は毎朝未明に開けられ夜四ツ(10時)に閉
 められた[引け四ツ]。それ以後はくぐり戸から。
 明六ツ午前5時には大門は開き泊まり客は帰る。
 泊まり客を見送った遊女たちはもう一眠りする。

○寝耳に水 
  不意の事が起って驚くことのたとえ。

○ほとときす鳴きつるかたをなかむれは
      たたあり明の月そのこれる

 千載集巻三夏 徳大寺実定 (右大臣)
*挿絵
 吉原遊郭の夜明け。遊女と客。カラス二羽が飛
 んでいる。ほの暗い烏の色は憎らしくないが、
 開く廓の大門口が憎い。


鳥渡一葉 (詳細不明)

錦出今利 (詳細不明)




(9)
牛ハ牛づれ
   御鬧未吉

 いつ 見ても
 おはらの 
  たゝぬ
  つき合に
 角文字ハ
  なき
  牛
   つれの里

*角文字 
 ひらがなの「い」の字を牛の角の形に見立てゝ
 「牛の角文字(角文字)」と呼んだ洒落。
 「い」のつく文字「怒り・啀み・諍い・悪戯・・・
 牛文字の牛と牛連れの牛をきかす。

 絵本吾妻遊 牛の角文字絵双紙屋HP
 徒然草 六十二段
 
○牛は牛づれ 馬は馬づれ
 類を同じくする者が相伴うことのたとえ。
 同類のもの、似たもの同士は自ら集まるということ。
 また、身分相応の者が集まれば巧くゆくものだとい
 うこと。 

*おはら おおはら(大原)(オハラとも) 京都市左京
 区(もと愛宕おたぎ郡)の一地区。
 大原にお腹をかけてお腹も立たない付き合い。
 
大原女は大原の里から黒木や木工品などを頭にのせ
 京都の町に売りに来る女。黒木売。おおはらめ
。

*
挿絵は黒木を積んだ牛を引く大原女達の行列。 
御鬧未吉 (詳細不明)




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