2020年3月3日 改訂


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教訓喩草(きょうくん たとえぐさ)  絵本(えほん) 花の緑(はな みどり)  三卷 三册 
 「上巻」
石川豊信画  江戸須原屋茂兵衞等
 宝暦十三年(1763年)
  原データ 
東北大学付属図書館狩野文庫画像データベース 
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「絵本花の緑
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「絵本花の緑下巻へ」

  

 
            
   教訓喩草(きょうくん たとえぐさ)  絵本花の緑
   
  商人・職人の心得について、こども向けに分かりやすく説いている。例えば
  ○商いは利倍を事とするものなれど、
実(まこと)の心なくしては、礎(いしづえ)なしに家を建てんとするが如し。
  
○銭(ぜに)は泉(せん)なり。泉(いづみ)の如しとて、湧たり減たりする物なれば、貧者を見てもあなどるべからず。
  
○掘々(ほるほる)と思う内に、鍬も次第に減るものなり。欲に目がくれ、身を失ふ人あり。

 
  
各巻十一話ずつの教訓に、それぞれ丁寧な可愛いゝ挿絵が添えられている。
  江戸時代の子供達が学んだ倫理や道徳、処世術などを知る手掛かりともなる三冊。墨摺絵本。
  画は江戸中期の浮世絵師
石川豊信(1711~1785)。江戸時代中期の浮世絵師。
  石川豊信は正徳元年生まれ。石川雅望の父。江戸小伝馬町の宿屋糠(ぬか)屋の養子となり、代々の
  七兵衛を名のる。西村重長にまなび,延享-宝暦のころ活躍。紅絵や紅摺(べにずり)絵の技法により美人
  画や「あぶな絵」を多作した。天明5年5月25日死去。75歳。江戸出身。号は咀篠堂(そしょうどう)、秀葩(しゅうは)。
  代表作に「花下美人図」。

  
また石川豊信は本ページの読本のところで掲載している「絵本明ぼの草」の挿絵絵師でもある。
  「絵本花の緑」の巻末には禿箒子(とくそうし)讃と記していることから「花の緑」の著者は
「絵本明(あけ)ぼの草」の
   著者浪華禿帚子と同じかも知れない。


  翻刻注釈に関して一青氏と福岡県の松尾守也氏に多々ご協力を頂きました。厚く御礼申し上げます。

  各ページの下に変体仮名の読み方を記しました。
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 教訓
 
喩草 絵本花の緑 上 


      石川豊信画
 



(1)序
1柳は緑、花は紅(くれない)の色々にて、春の
慰(なぐさミ)ハ数多あまたある中にも高閣錦帳(こうかくきんちょう)
のうちの幼君雅公の遊あそびにハ広説ひろくとき
艶詞(やさしきことバ)の諺(ことわざ)に如(しかじ)と、絵にし筆
を廻らせしハ丹青(たんせい)氏(し)(の)妙用(めうよう)と
辞(ことば)を咲(さか)す「花の緑」と題して


 (変体仮名の読み方)
 柳は(盤)緑、花は(盤)紅の色々に(尓)て春の
 慰ハ数多あ(阿)る中にも高閣錦帳
 の(乃)うちの幼君雅公の遊に(尓)ハ、広説
 艶詞の(能)諺に(尓)如じと(登)絵に(尓)
 し、筆
 を廻らせしハ丹青氏妙用と(登)
 辞を咲す(春)「花の緑」と題して(天)

1○柳は緑(みどり)花は紅(くれない)
柳は緑色をしており、花は紅に咲くように、草木の
自然の姿がそのまま諸法の実相をあらわすこと。
自然のことわり。禅宗で、悟りの心境をいい表す句。

2丹青 朱色と青色の絵の具。「丹青不知老将至 
富貴於我如浮雲」 「丹青知らず、老いのまさに至ら
んとするを。富貴は我において浮雲のごとし。」
唐詩選 杜甫 七言古詩 「丹青引贈曹将軍覇」出典。
3丹青氏の妙用 画業に優れた人の不思議な力によって。



 

(2)


三ツの巻となせしハ幾千代春
の永き日を忘るゝね覚の
御伽(とぎ)
に備ふと、筆に任せて而言(しかいふ)もの
1ならし

 宝暦十三のとし
    
未(ひつじ)春書於
     
2二酉堂亭


家建(やたて)3蔵(くら)びらきよし
 一年のはかりこと
(計り事)
 春にあり
 家建蔵び(飛゛)らき(起)よし。
 一年の(能) は(者)か(可)りこと
 春にあり(里)。




3蔵開き 年の初めに、吉日を選んでその年初め
 て蔵を開くこと。多く正月十一日に行い、鏡餅
 を雑煮などにして食べた。江戸時代、大名が米
 蔵を開く儀式をしたのにはじまる。商人は縁起
 を担ぐので、十一日は左右対称の観音開きで商
 売繁盛を祝うという意味もあった。
三ツの巻となせしハ幾千代春
の(乃)永き日を忘るゝね(祢)覚の御伽
に(尓)備ふと、筆に(尓)任せて而言もの
ならし
宝暦十三の(能)とし未春書於
              二酉堂亭

1ならし(なるらし)…であるらしい。
2二酉堂亭 関月(かんげつ)(1747~1797)大阪の人、初め柳原氏、名は徳基、俗称源二郎、菁莪堂(また二酉堂亭)と号し、絵本 を描くの傍ら書肆を営み、家を千草屋と云へり、安永五年頃書肆を廃めて画事を専らとし、爾後蔀氏に 改め、名は旧の如く徳墓、字は子温、俗称は約して原二とし、新たに関月を号とせしなり。彼は安永以後漸次和漢の画法を研究し、殊に人物・山水等に長じたり、又多少学殖ありて、詩文及び書道に堪能なりしと云ふ。井上和雄著・昭和六年(1931)刊
(文意)一年の計は春にあり。
 家屋建築。蔵開きよし。



(挿絵)棟梁が絵板図を手に、
 職人と仕事の段取りを話し
 ている。





(3)
商(あきな)ひは利倍を
 こととするものなれど
 
実(まこと)の心なくしては
 
礎(いしづへ)なしに家を

 建んとするがごとし 
其本乱而末(そのもとミたれてすへ)
治者(おさまるもの)未レ有レ之(いまだこれあらず)

     
    大こくや
 普請より内蔵ニて商仕候
      □□□ (看板)

     
 建んとす(春)るが(可゛)ごとし。
 其本乱而末(そのもとミたれてすへ)
 治者(おさまるもの)
 未レ有レ之
(いまだこれあらず)


商ひは(盤)利倍をことと(登)
す(春)る
ものなれど、
実の(農)心なくしては(盤)
礎なしに家を




○正直の儲けは身に付く
○正直の頭に神宿る
*大学 儒教の経書。もと「礼記」の一編。唐の韓愈、
宋の二程子に推重され、朱熹が章句を作って四書の
一となる。明徳・止至善・新民の三綱領と格物・致知・
誠意・正心・修身・斉家・治国・平天下の八条目を説く。
(文意)商いは専ら利益を増やすことを目的とするものだが、真の心がなくては基礎工事なくして家を建てるに等しい。
その本(もと)(根本、身を修めること)乱れて末(すえ)国や天下が治まっていることはない.。(*大学)


(挿絵)左頁は六人の人足が櫓(やぐら)胴搗きで地固めをしている。丸太の最下部にある6本の縄で丸太を持ち上げ、ドスンと下に落として地固めをしている。奥に家の土台にする石が積んである。右頁は普請現場の入口と看板。「大黒屋、普請より内蔵(うちぐら)にて商い仕り候」と記してある。戸口に幼子を背負う母親と子ども。子どもが手にするのは寺子屋の手習草紙。



(4)

仕事しさして煙草呑たがる
職人をつかふ
棟梁(たうりやう)と
 いたづらする
 子をもつた親の


 油断のならぬ事
 河岸に
杭(くゐ)を打て
 洪水を
禦(ふせぐ)がごとし
 油断のならぬ事
 河岸に杭を打て 
 洪水を禦が゛(可゛)ご(古゛)とし



仕事し(志)さして、煙草呑た(多)が(可゛)る(流)
職人をつ(徒)か(可)ふ棟梁と、
い
たづ(多徒゜)らす(春)る
子をもつた(多)親の

○堤の崩れも蟻の穴 
○蟻の穴から堤は切れる

○油断は怪我の元
*亀の子搗きは円盤状の石に綱を放射状に結び付け、
 これを大ぜいが手繰っては緩め、緩めては手繰
 ることで地面を固める作業。

(文意)仕事中になにかと煙草を喫みたがる職人を雇って働かせる棟梁と、思わぬ悪戯をする子どもを持った親は、わずかな油断も隙もならないことは、河岸に杭を打ち洪水を防ぐのと同じこと。

(挿絵)煙草を喫って休憩している職人達と、その隙に悪戯子供達が職人達の真似をして*亀の子搗きをしている図。職人達は子ども達の遊びを面白そうに見ている。



(5)
 石に
1根つぎして
 普請する人も
 石を
切(きり)杭(くい)を打


 働く職人も
 同じ世をいとなむ
 石に根つぎの
 下ごしらへなるべし

 働く職人も、
 同じ世をいとなむ
 石に(耳)ね(根)つ(徒)ぎの(乃)
 下ご(古゛)しらへ  なるべ(遍゛)し


石に(耳)ね(根)つ(徒)ぎして(亭)
普請す(春)る人も
石を切 杭を打

1根継は柱の根の朽ちた部分を除き、他の材で
 継ぎ足すこと。石に根継 きわめて丈夫なこ
 とのたとえ。また、いよいよ確かなこと。
 確実で堅固なことをいう。

(文意)石を組み、石を接いで土台を築き家を普請する人も、石を切り杭を打つ職人もみな同じ世に生きて仕事をしている。柱も朽ちぬうちに石で根継して下準備をしておく。一家の暮らしを支えのも下拵えが大切。

(挿絵)右頁石工(いしく)がノミと金槌で礎石工事をしている。左頁杭を木槌で打ち込む人夫。側に杭、もっこ、地縄。



(6)
人
数多(あまた)つかい給ふ
旦那は
家内の
1
規矩(すミ) 準縄(かね)
 正しく し給ひて

柱となり
棟(むなき)となるべきを
見立て
それぞれに
 
 2かひ給ハゝ
 其家
長久(てうきう)
 繁昌 なるべし
 柱となり 棟となるべきを
 見立て それぞれに
 か(可)ひ給ハゝ
 其家 長久 繁昌 なるべし

人数多 つ(徒)か(可)い給ふ
旦那は(盤) 家内の
規矩準縄 正しくし(志)給ひて

1規矩準縄(きくじゅんじょう)
 [孟子離婁上](「規」はコンパス、「矩」は物
 さし、「準」は水盛り、「縄」はすみなわの意)
 物事の規準となるもの。規則。手本。
2かふ 支ふ。交ふ
(文意)人を多く使う旦那が墨曲尺(すみがね)を正しく使い、柱、棟木となる木材を適材適所に用いて家を建てれば、その家は幾久しく繁昌することだ。

(挿絵)建築現場。大工達が足場を組み、梁(はり)を綱で結び、梃子で持ち上げている。少年が綱を手に走り寄る。筵の上に大鋸、木槌。鉋屑。


 

(7)
 家に修覆をくわへるに
 時節おそきはあしき也
 早きハ
 
1
費(つゐえ)なり


 時節を忘るゝハ
   
怠(おこた)りなり
 
燕(つばめ)は春の2社日に
 来りて秋の社日に帰るなり
 人として其時を 
 知らずんば
 鳥にだも
 しかざるべけむや


 時節を忘るゝハ  怠りな(那)り(里)
 燕は(盤)春の(能)社日に
 来りて、秋の社日に  帰るなり
 人として 其時を
 知らず(春゛)んば(者゛)
  鳥にだ(多゛)も
 し(志)か(可)ざる
 べ(遍゛)けむ(舞)や

家に(耳)修覆をくわ(王)へるに
時節おそき(起)は(盤)
  あしき也
早きハ費なり


1費(つゐえ) 費用。むだづかい。
2社日(しゃにち)(「社」は土地の神の意)
 暦注の一。春分・秋分に最も近い戊(つちのえ)
 の日。土の神を祭って、春は成育を祈り、秋は
 収穫のお礼参りをする。春のを春社、秋のを秋
 社という。

(文意)家屋修復の時期は遅過ぎは悪し。早過ぎは費用の無駄。時期を忘れるのは怠りというもの。ツバメは春の社日に来て秋の社日に帰るもの。人としてその時期を知らないのは鳥にも及ばない。

(挿絵)右頁は屋根瓦の修復をする職人三人。左頁は庇の上の男と屋内の女が空飛ぶツバメを見ている。柳と紅葉は春秋の社日を暗示するものか。



(8)
1
銭(ぜに)は泉(せん)なり
 
泉(いづミ)のごとしとて
 涌たり減たりする
 物なれバ
 
貧者(ひんしや)を見ても

 あなどるべからず
 
泉(せん)のん(○)の字を
 
に(○)にかへて
 ぜに
(銭)とハいふなり
 たとへば
 
難波(なんば)のん(○)の字を
  
に(○)にかへて
 難波(なには)といふが ごとし
 あなどる べか(可)らず(須゛)
 泉(せん)のんの字を に
   に(尓)か(可)へて
 ぜに(銭)とハいふなり
 たとへば(者゛)難波(なんば)の
 「ん」の字を
 「に」に(尓)か(可)へて
  「なには(者)」といふが(可゛)
   ごとし

銭は(盤)泉なり
泉のこ(古)としとて、
涌た(多)り減た(堂)りす(春)る
物なれバ、
貧者を見ても

1○銭は湧き物 銭金は思いがけずに手に入ったり、
 自然と儲かるものであるから、今はないからとい
 って気に病んだりすることないということ。

2井戸替えは井戸の水をすっかり汲み上げて井戸を
 掃除することで近世には七月七日に行うことが多
 かった。
(文意)
銭(ぜに)は泉(せん)なり。
泉(いずみ)のように湧いたり減ったりするものなので、貧しい者を見ても軽く見てはならない。泉(せん)の「ん」を「に」に替えて銭(ぜに)と言うものである。難波(なんば)の「ん」を「に」に替え難波(なにわ)というに同じこと。(銭は湧き物)

(挿絵)
2井戸替え・井戸浚(さら)えの様子。井戸水を滑車で大桶に汲み上げ働いている職人達の姿が描かれている。




(9)
1築山(つきやま)をつくるに
土(つち)一荷つゝ持て
つゐには山となる
 
富貴を好む人は
小利の商ひなりとも
怠らず
積(つめ)ば
金銀の山となるべし


 富貴を 好む人は(盤)
 小利の商ひなりとも
 怠らず(須゛)積ば(者゛)
 金銀の 山となるべし

築山を
つ(徒)くるに(耳)、
土 一荷つゝ持て
つゐに(尓)は(盤)山となる。

1築山 庭園などに、山に見たてて土砂または
 石などを用いてきずいたもの。

○商いは三年
○商いは牛の涎
○商いは数でこなせ
(文意)庭に築山を築くには土を一荷ずつ運び山にする。わずかな利益の商いでもおろそかにせずに大切に積めば、いつか金銀の山となり金持ちとなる。(塵も積もれば山となる。)

(挿絵)右頁の老人は屋敷の主で子供はその孫か。肩に工具を担ぐのは庭師の親方。左頁は天秤でもっこを担ぐ人足と、鍬(くわ)で土を掘る人足。池に杜若が咲いている。縁側に手水鉢。





(10)
 奥ふかき
高殿(たかどの)に
 いみじく
育(そだち)給ふ
 御方はものゝ本など
 
読(よミ)て またハ


 はしたなからぬ品を
 もてあそび
 松は千年の
 正しき
操(みさほ)を
 さとり給へかし
 はした(多)な
 か(可)らぬ品を
 もてあそび(飛゛)
 松は(盤)千年の
 正しき(起) 操を(越)
 さとり給へかし

奥ふか(可)き(起) 高殿に(尓)
いみじく 育給ふ
御方は(盤)、ものゝ本など(登゛)
読て、また(多)ハ

(文意)深窓の高殿で大切にお育ちされる御方はものゝ本など読み、また優れた品をもて遊び、変わらぬ正しい操、貞節をお知りになるとか。

(挿絵)縁側で二人の女性が談笑しながら本や絵を嗜む図。手にしているのは家紋集か。側に悪戯な男の子が走りより、本の上に何かを落としている。縁側の上に煙草盆と書籍。




(11)
 幼きとき
 我まゝに
 育ちて
 成人して
 よき人に
 
(名物あま酒・一流あま□)
 (ゑびすや)


 ならぬとて世話やくは
 茶をわかして白湯を
 飲たがるやうなものなり
 人のおしへハ幼少の時に
 
有(あり)としるべし

 
 1しがらき茶
    御休所

 ならぬとて  世話やくは(盤)
 茶をわか(可)して 白湯を
 飲た(多)が(可゛)るやうな 
     もの(能)なり
 人の(乃)お(於)しへハ
  幼少の(農) 時に(耳)
 有とし(志)るべし


幼きとき(起)
我まゝに
育ちて、
成人してよき人に(尓)

1しがらき(信楽) 滋賀県甲賀市にある町。
 古くから銘茶、信楽焼は有名。
○幼子は白き糸の如し 
 白い糸はどの様な色ににも染まるとことから幼い
 子どもの躾は大切であることのたとえ。

○子を憐(あわ)れまば杖を与え、子を憎く思わば
 食(しょく)に飽かすべし  杖はムチの意。
 子を可愛いと思うなら厳しく育てよ。憎いと思う
 なら食べ物を欲しがるだけ与えてわがままに育て
 よ。(諫草ー上)

○子を養いて教えざるは父の過ちなり、訓え導い
 て厳(いまし)めざるは師の情(おこた)りなり。

(文意)幼少の頃からわがままに育てれば、しっかりした大人にならない等と言いながら、子どもに世話を焼くのは、茶を沸かして白湯を飲みたがるようなもの。立派な人と成るように教育することは、幼少の時にありと心得るべし。(子を憐(あわ)れまば杖を与え)


(挿絵)
右頁は甘酒屋の店先。ゑびすやの暖簾が掛かっている。
左頁は信楽茶屋。茶釜と風炉、水差し、桶など置いてある。盤台を持つ男は飴屋か。子どもが寄って来ている。




(12)
 
掘(ほる)々とおもふうちに
 
鍬(くハ)も次第に
 減るものなり

 
1欲に目がくれ身を失ふ
 人あり 心得
 有べき事ぞかし

掘々とおもふうちに
鍬も次第に(尓) 減るものなり
欲に(尓)目
が(可゛)くれ 身を失ふ
人あり 心得有べ(遍゛)き(起)
 事ぞか(可)し

1○欲に目が眩(くら)む 
 ○欲に底無し
 ○欲多ければ身を傷(そこな)い、財多ければ
 身を煩わす
。
(文意)掘る掘ると掘っている内に鍬(くわ)は磨り減るもの。欲しい欲しいと思っている内にいつしか欲に目が眩み、理性も減って身を誤る人もある。欲に底無しと心得ておかなければならない。

(挿絵)人足二人がもっこ(畚)を持ち、真ん中の腰に煙草入れをさした男が鍬で土砂を入れている。




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