2020/4/26 改訂 表紙へ 目次へ |
原データ 東北大学デジタルコレクション 狩野文庫データベース |
鎌倉時代以降、末尾に「京」、あるいは「ん」がつけ加えられるようにもなった。 いろは歌は ものという。弘法大師の作といわれてきたが、現在では否定されている。平安中期以後の作で、 仮名文字を 習得するための手習いの手本や字母表として使われた。 色葉歌。伊呂波喩。伊呂波短歌。 江戸時代、手習いの「いろは歌」教訓本は各種、出版されたが、ここに紹介する児童教訓伊呂 波歌絵鈔の初版は安永四年(1775年)である。「いろは」で始まる教訓歌がそれぞれ一字につき 三首ずつ書かれ、四十七字に各三首ずつ百四十一首の歌。次に「京」「ん」「一」~「十」 「百」「千」「万」は一首ずつ、末尾に「手習の始も梅のさきかけていろはにゆづる難波津の 歌」の一首で終わる。合わせて百五十七首の歌が書かれている。墨摺絵本。 挿絵は 江戸時代中期-後期の浮世絵師。京都の人。画風は西川 波歌」、8年刊「絵本 細見、地誌、 著者 翻刻と解説については椿太平氏・沙華茶庵定仁氏・松尾守也氏・wind氏各位に多大のご協力を頂きました。 |
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(表紙) じどうきょうくん いろはうた えしょう 児童教訓 伊呂波歌絵鈔 |
(1) 児童 伊呂波歌の序 教訓 母はもろもろの 父を1「かぞ」といひ母を2「 3 作りたまへる歌の |
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(2) ふ児童の伊呂波とて口に唱へ耳にふれ
て、さとしやすきを として 或人袖にし来りて 事を求む。誠に の をしめす一 の3 なひしらば、作れる人の 神都書林 4講古堂主書 |
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(3) 1祈る身ハよこしまならぬねがひこそ 神もあハれとうけたまふらん 2いたづらに送るまじきハ月と日の めぐりひまなき影にてもしれ いましめの人の行べき道ならで 胸3とゞろきのはしハあやうし |
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(挿絵) 梅の咲いている新春初参り。神社の拝殿の前に額づく侍。 後ろの子供は袴を佩いていないので侍の子ではなく、 順番を待つ商家の小僧らしい。 膝の上に風呂敷包みがある。 狛犬は一般に参道の両側に、神社に向かって右側に口を 開いた阿像が置かれているものだが、この絵では拝殿の 回廊に置いてある。境内には参拝する人々が描かれる。 |
(4) よき道にこそ心ざすべき 論ずるハよからぬ事とおもへども 春立て空ものとけき 忘るまじきハ年のくれかな 恥かしと思ふ心のつきぬるハ 徳に入べきはじめとやせん 2浜荻の筆につきてもしのばるゝ 今に |
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(右頁挿絵) 塀の外に伸びているは李の木。笠の具合がおかしいのを子供達が 囃し立てるが、手を上にあげて笠を直すのはやめておこう。 (左頁挿絵) 新春武家の座敷場景。裃姿の侍は左腰に刀を差している。 三宝の上には鏡餅とお供え物。左の振袖姿は娘で、右は妻女か。 侍は右手に「覚帳」を持っている。 歳末のヤリクリに苦労したらしい。 |
(5) 1 日暮て道をいそぐ 2西といひ東にあそぶ其人を 3 養へる蜂も4子といふ物に迷ひて 5佛さへ三度なづれハ 6程しりて 身をも家をも 星の夜の |
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(右頁挿絵) 常夜灯に灯をともそうとしている。 それを横目で見ながら提灯提げて先を急ぐ男。後悔先に立たずと。 (左頁挿絵) 本を読み飽きて眠っている坊主の鼻に紙縒りを差し入れる イタズラを仕掛ける子供。三度もやると怒り出す。 |
(6) 1へつらはぬ 心にいれば薬ともなる 2隔していひたき事も心せよ いはぬハいふに増るともいふ へだてなき春の恵に 花に出たつ 3年をへて 若きしわざの目に余りぬる 4 恥しからぬものとこそきけ 5 |
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(右頁挿絵) 家業を疎かにして女のところに入り浸っている息子を迎えにきた 伯父貴が意見をしているところ。 (左頁挿絵) 夜なべ仕事をしている嫁や娘に意見している姑。 きっと「油が勿体ない!夕なべで終わりにしなされ」と叱っているいる のであろう。年をとってくると若い連中の行動が目に余ってくる。 |
(7) 1 2 遠き ちかきより遠きに 3山となるのも 短き人にをしへなりけり 5利に迷ひ道に背ける愚さハ 賢き人に笑はれぬべし 6利にわしる習ひハ常の人心 さりながら義を忘るへきかは |
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(右頁挿絵) 杖をつき、焙烙頭巾を被った老人が池の端に立っている。 お供に孫の娘と男の子。「(チュウ(忠)」と鳴きながら雀が飛び、 「カウ(孝)」と鳴く烏が枝に止まっている。 (左頁挿絵) 侍が刀の柄に手を伸ばしている。理不尽な言い掛かりをつけている のであろうか。(大刀を差し、武張った侍は「奴」かもしれない)。 頭を下げる町人に後で仲間の二人が「お前に理がある」とか 「長い物には巻かれろ」と慰めるのであろう。 |
(8) ぬる事もうち忘れてやから衣 1 泉をよそに見しぞかしこき ぬるまをもおしむ心になるならバ 何れの道もとげざらめやハ 留守もりハ 心に弓をはるべかりける 2 七の賢き名をぞ伝ふる 4るてんして夏来にけらし 衣も花の名残とやミん |
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(右頁挿絵) 寝る間を惜しんで砧を打っている父と子(前髪立ち。 小僧かもしれない)。妻女は脇息に凭れて居眠りしている。 天井からぶら下がっているのは手元を照らす灯り。夜なべ仕事を している。 (左頁挿絵) 息子(前髪が立っている)を連れて旅立つ男が股立(ももだち)を とっている。長旅に出るのであろう。「留守を頼む」と見送る妻 と二人の子供に言っている。竈の下には薪があり、米俵も積んで ある。妻子が食うのには困らない様子。 |
(9) 名づけられたる1草に 2をのれより善悪ともに出ぬれハ 戻るもおなじことハりとしれ 遅く寝て早ふ起るを薬とハ 聞どもならぬものにぞありける 我もよく せまじきものハ 和歌の浦に遊びながらも身をおさめ 家とゝのへよ敷島の人 忘れじな世に |
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(右頁挿絵) 書見台に本を置き、読書中の公家(立烏帽子)に童子がお茶を 運んでいる。「道」を教える学者らしい。 (左頁挿絵) 夜を徹した(燭台には蝋燭が煌々)博打で熱くなった(片肌脱いで いる)男二人が取っ組み合いの喧嘩を始めた様子。 奥に坐る横縞の男が胴元らしい。 |
(10) 守て 1垣はたゞよひ中にするならひぞや 馴ても かくれなくよき名取だにいとふべき あしきハことに恥さらめやは 2 3欲は身を損ふものと心得て すくなふするをたしなミとせよ 世を渡る 4 |
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(右頁挿絵) 襖の左には身分ある女性。その女性が産んだ子の乳母と女中が 噂話をしている。 (左頁挿絵) 月(星も出ていよう)の光の下で、砧で藁打ち、縄を綯っている 百姓の姿。即ち夜なべ仕事を灯火ではなく、星の光でやっている。 お茶を運んでいる倅。 瓦葺の屋根であるから、農家にしてはかなり裕福。 不断の努力の成果だと教えている。 |
(11) 1誰もみな知がほにしてしらぬかな たゞ 2 尋ねずハ教る人もなからまし 3 4例の無理 忍ぶにたえぬ事ハあらじな 例といへバ世々に 今日のあふひの祭のミかは 礼をいふ事としあらバ忘れずも その折々にこゝろがけなん |
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(右頁挿絵) 寝込んでいた(奥の部屋には畳んだ寝具がある)遊女(三味線を 脇に置いている)を往診に来た医者(総髪である)。 養生の仕方を話しているらしい。滋養のある鍋料理を勧めているらしい。 快気祝いに医者に酒が振舞われているようだ。 (左頁挿絵) 長煙管(キセル)を叩きながら、祖父(左側は嫁。 その手には老人が被る大黒頭巾がある。繕っているのか)が孫を 叱っている。孫は手をついて詫びている。それを見守る母親。 子供への躾の良さが窺がわれる。奥の部屋には碁盤と碁笥。 老人の趣味らしい。 |
其
(12) 麁相にて巧にあらぬ誤あやまりハ 料簡してぞ見るべかりける 1其むかし人の恵にあづからバ 身終るまでもわするべきかハ それもこれも心得顔に見ゆれとも 知ぬ事こそ世にハ多けれ 月花もめでゝ家をもおさめつゝ 2雪や蛍の学びをもせよ 3常となるやうにつねつね勤なバ つとめる つらかりし嫁の昔はわすれつゝ 4姑となりて顔のこはさよ |
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(右頁挿絵) 俎板の上には蛸。家中総出でそれを見守っていると、料理をする 男(この家の主人)が誤って皿を落としてしまった(右手で頭を掻い ている)。わざとやった訳ではないのだから大目にみよう。 (左頁挿絵) 角隠しをつけた娘とその母(祖母かもしれない)。角隠しは真宗の 女門徒がお寺参りの時に頭に被った飾り「絵本詞の花」12頁参照)。 寺参りの道中、「自然を愛で、家を治め、勉強も忘れるな」と教えている。 |
(13) 寝る事も程に たしなむ中の其一つぞや 1 3 色こそよけれ山吹の花 4なに事も始にふかく思ひなバ 誰しも後の 何事をなすともなしにをこたりの 身にしミ |
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(右頁挿絵) 朝飯の支度はすっかり整った様子。飯櫃から椀(茶碗ではない)に飯を よそおっている。そんな時刻まで眠りを貪っていた男。 これでは貧乏神に憑り付かれるぞ。 (左頁挿絵) 山吹の花を生けている。山吹は何となく笑みを含み、物言わぬ風情が いいものだ。 |
(14) 楽に 若ひむかしの 1楽は苦の 2 身を顧てそれに習ふな むかしをも今ハしたハじ かくばかり 虫ぼしになき世の人ぞしのばるゝ 手にあかづきし むかし いひ流しけん天の川なミ |
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(右頁挿絵) 縁台を出して商売している蝋燭(ろうそく)屋。その店先を通る 薪行商の年寄り。若い頃の報いと言いたいらしい。 看板の蝋燭の絵の横の字は「きがけ ろうそく」生掛はこよりに灯心 をまきつけて芯とし、その上に油でねった蝋(ろう)を数回塗って乾かした ろうそくの意。和蝋燭。 (左頁挿絵) ご開帳の賑わい。裃姿の男が「弁慶の鎧」「(鎮西八郎源)為朝の弓」 「景□の(兜?)」の口上を述べている。 竹柵の下には御賽銭が置かれている。 |
(15) 1遠きハ花の香ともいふなり うき世とハあだにもいはじ皆人の 2 3井の 月に4明石や須磨の巻々 5 |
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(右頁挿絵) 来客をもてなしている女房。亭主が出先から帰ってきた。 付き合いは適当な距離を置いていた方がいいものだ。 疑われないように。 (左頁挿絵) 水を汲みながら井戸を覗くと蛙がいる。 この蛙は、一生ここを住処とし、外のことを知ろうとしないだろう。 最上段へ |
(16) 1 照して遊ぶ 2野に山に伏せし昔を今ハはや のちの世もありと おそろしき思ひを胸に 心の内ぞ苦しかるべき 3老の身ハ見もせぬ恋に迷ふらん たゞ 4老の字に子のしたがふハ見てぞよき |
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(右頁挿絵) 鵜飼舟の図。こういう殺生をしていると、後の世は闇夜に迷うこと になるぞ。 (左頁挿絵) 恐ろしい思いを胸に秘めて、今から他人の家に押し入ろうとしている 人相の悪い二人組み。床下から這い入り、畳を押し上げる作戦。 刃物をもっているからかなり凶悪。 |
(17) 1草も木も 成てふあだな人ぞ恥べき 苦になすを 広き芭蕉ハ破れやすきに 車のミ手にしたがひて 思ひハ糸にのべられもせず 2山といひ海にたとへし 深き恵ハ 3 4八重ひとへ |
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(右頁挿絵) 筵の上に干した穀類を手入れする母親。庭では子供達が長い竹棹で 柿をもいでいる。もいだ柿は母の足元に持ってきている。 渋柿なら干し柿にするのだろう。 (左頁挿絵) 二人目の子供をあやしている夫婦。それを物陰から見ている一番目の子供。 誰でも親の深い愛を注がれて育つものだよ。 |
(18) 1 心してこそ遠ざかるべき 2枕して昼の所作をも思ふべし 身の 3学びなん蛍も雪もからずして 油もたれり 4 けんけんと 5毛を吹て 6すりこ木をもて洗ふ重箱 |
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(右頁挿絵) 遊女屋に引きずり込まれそうな客。 「傾城に誠なし」というから、遠ざかっておくのがいい。 (左頁挿絵) 庭の朝顔が今朝も美しく咲いた。 |
(19) 1流るゝ麦もしらぬ 2 3古き筆の 猶かきくどけ長き夜すがら 4子に迷ふ つま 5心だに誠の道を忘れずハ 迷ハで人のゆくゑよからん 6こしかたの 7 |
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(右頁挿絵) 読書に夢中になって、庭に干した麦がやってきた夕立に流されている。 中国の故事。 (左頁挿絵) 鼓の伴奏を得て、灯台の下で謡の稽古に励んでいる。 それを聴いている妻女。その時奥山で鹿が鳴く。 |
(20) えにしありて人の妻ともなりし身ハ 内をおさむる道な忘れそ 1 ならて えにしあらバ2鬼一口もいとはしな 3安達か原にやどりなすとも 4手してのミ なくて事たる物は持じな 手に取し物も落すハ世の習ひ 心に 5手に結ぶみたらし川の氷るにも はこぶあゆミの程ぞしらるゝ |
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(右頁挿絵) 縁あって嫁いだ先の「内」のことを任された嫁。 「内」を治めるために思案している。 (左頁挿絵) 水を掬って飲むための「なりひさご」を枝にかけていたが、 風に鳴るので「うるさい」とばかりに投げ捨てた許由。 その後は水を手で掬って飲んだという中国の故事。 最上段へ |
(21) 秋の夜をあだに明さず1つゞりさし 2 朝な朝な神に願の 身にある癖を祈るべきかな 3哀れなり旅のやどりの声々は 心しらるゝゆふ さのミやハ夜のふすまもかさねじな 野に 4酒はたゞ乱るゝをこそ 一さし舞ハさかづきのうへ さやけさハ秋にゆづりて春の夜の |
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(右頁挿絵) 秋の夜、着物を縫って冬支度をしている。 (左頁挿絵) 野に伏す人(=乞食)に施しをしている老婆。 (貧しい人のことを思い)日頃から贅沢は慎むべきだ。 |
(22) 聞たびに 1 2君が代は濱の 世に生ふ松の 3気の違ふ人を笑ふぞ心なき 乱れ 4雪ふりて時しもわかぬ竹の子も 親に孝ある名にや 夢ハもと思ふ事ゆへ見るといへど 思はぬ事を見るもゆめなり |
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(右頁挿絵) 小姓が飼鳥を入れた鳥籠を主人の前に運んで来た。 (左頁挿絵) 物を取るのを譲り合っている二人。 |
(23) 珍らしき 物ならずして嬉しきハ 人の言葉の花にそありける 人が人とハいふまじきかな 目にみなばまことゝすべき事なれど 見る人にこそよるへかりけれ 水鳥ハ水にすミても世を渡る わたりかねたる人は恥べき 1みちのくの忍ぶにたへバ何事も 乱れに及ぶ事ハあらしな 2ミのひとつなき身なりても人として よからぬ |
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(右頁挿絵) 雨の中を歩いてきて、足先と高下駄が汚れてしまった。 軒先でやすんでいると、そこの女将が水を持ってきてくれ、替え下駄まで 貸してくれた。 (左頁挿絵) 男の懐に手を伸ばした乞食の手を男が押さえている。 物乞いはしてもいいが、他人様の懐には手を出してはならない。 |
(24) 1 人の人たる道とこそ 心のたねハのこる言の葉 2諸悪莫作衆善奉行と云事の ならぬ所をなすよしもかな ゑくぼにも見えしむかしも有ものと 3三平二満おかしかりけり 4 人にもこゝろをくべかりける 絵にのこる昔の人ぞしのばるゝ くまなき名をも今につたへて |
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(右頁挿絵) 鎧に身を固め、大刀を腰に、背中には箙(えびら)に収めた矢。 手前には蹲踞して控える武者がいるので、高位の武将であろう。 出陣に際し「死するとも名を汚すな」と元服前の息子に言い聞かせ、短刀を 手渡している。(この絵は「太平記」の「桜井の別れ」の場面。 湊川の戦いに出陣する楠正成が11歳の嫡子正行に、後醍醐帝から 下賜された菊水の紋の入った短刀を手渡している。) (左頁挿絵) 鏡に向かっているお多福を隣の部屋から覗いている二人。 |
(25) 人の身の 鏡に似てもたうとかりけり 1 いよいよ人に 人として鳥にしかずといはれなバ 世の 物忘れするともよしや世中に 人と生れしかひなからめや ぬけて |
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(右頁挿絵) 「月は鏡に似ているが、人の身の罪を映すわけではない」と女に説く墨染め姿。 (左頁挿絵) 酔っ払って草履は脱げ懐の物を落として「わが身を忘れた人」と世の人に 笑われる男。 最上段へ |
(26) 1 2 さかだちのほる心とゞめよ 3すり 悪しき 千代も |
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(右頁挿絵) 四人の賃餅搗きが餅を搗きあげ、家族が丸める。新年を迎える準備。 (左頁挿絵) 斧を石で研いでいる老婆。「何をしてる」と問えば「針を作る」という。 その努力に比べれば、自分が学業に打ち込む努力はまだまだだ。 |
(27) 京といへハ 人とかく なしやと問はゞいかに答へん |
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(右頁挿絵) 京都から下ってきた旅人が京のたよりを届けてくれた。 (左頁挿絵) 浮かれ歩く三人に盆を差し出す乞食。それを見ている童。 |
(28) 一にまづ忘れまじきハ 二はいかに |
*二十四孝 中国で、古今の孝子二四人を選 定したもの。 |
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(右頁挿絵) 二十四孝。揚香(ようこう)の故事。楊香は父と二人山中に入り凶暴な 虎に遭遇する。自分の命を虎に与え、父だけは助けて下さいと祈る孝心に 虎が逃げ去る。 (左頁挿絵) 五人の男は羽織を羽織っている。何か大事な寄り合いであるらしい。 その席上で巻物(折り畳まれた書状ではない)が開陳され、左端の男が 読み聞かせているようである。 |
(29) 1三徳は たばこ入かと おもひしに いはれを聞ハ たうとかりけれ 2四徳とハ 仁義 礼智と 心得て かな本にて□ □□□□□□□ |
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(右頁挿絵) 儒者の家に学びに来た侍の子。御守役で付いて来た奴は上がり框で 煙草を吸いながら待っている。「五徳は火鉢の中にいれておくものだから、 三徳は煙草入れ」と思っていた無学な奴。 (左頁挿絵) かな本を開いている姉妹。一人は立膝、一人は寝転んでいる。 |
(30) 1□□□□□□□人の 石と答て笑ハれやせん 2六ハ |
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(右頁挿絵) 杖をついた武士が元服後間もない孫を連れている。 老武士が五輪塔を指差して「これは何?」と尋ねたら、孫が「石」と答えた。 (左頁挿絵) 竹林で遊ぶ子供。唐鍬(とうぐわ)で筍を掘っている子供。 竹に登っている子供が二人。竹がまっすぐ伸びるように、心も曲がらず 素直に正直に育つようにと願いをこめた絵。 最上段へ |
(31) 1(七)□□ 2八の字は神の道にもたうとミぬ |
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(右頁挿絵) 竹林の七賢人。 (左頁挿絵) 繁盛している二八蕎麦屋。 |
(32) 1 恐れ 十の字ハ これも |
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(右頁挿絵) 月は左下部分が欠けているが、満月を描いたものであろう。 烏帽子・狩衣姿の男3人は公家か。「根結い垂れ髪」の女性は宮中の女官か。 月見の宴を張っている。 (左頁挿絵)草履の鼻緒を挿げ替えている職人。土の上に胡坐をかいて作業 している。 |
(33) 河辺の里によする舟人 |
1 渡らい(わたらい)世を渡ること。 なりわい。渡世。 地名では三重県度会郡度会町がある。 |
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(右頁挿絵) 荷物を満載した荷足舟が度会の里に着いた。「さあ、荷揚げだ」と舟板を 渡そうとしている男。 (左頁挿絵) 稲を刈り取り、家路を急ぐ農民の家族。後ろについてくる女房は頭の上に 昼の弁当を乗せ、右手に子供の手を引いている。治まれる世の幸せである。 |
(34) 万国を照す |
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(挿絵) 神社門前に坐る立烏帽子・狩衣の二人は神職。この神社修復のために寄進を 募っている。 膝をついて拝礼する男女二人。参拝客が続々と詰め掛けている。 寄進の品は櫛・鏡・簪・笄・煙管など。 |
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(35) いにしへ児童の手習ふ始ハ、1 をも学て、仁徳の帝の御位につかせ給ふ事を祝し奉りて、2難波津に咲やこのはな 冬ごもり今を春べと咲や此花、といへる言の葉をもて手を学びけるとなんよりて、其心を 手習の始も いろはにゆづる |
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(右頁挿絵) 寺子屋手習いの場景。 |
(36) とも をあまなひ、善に勧ミ悪を 笑ひ草となるとも、愚老が べしと、 南勢野叟書 画図 洛西住 下河辺拾水 天保七申年初冬補刻 皇都 藤井文政堂 寺町通五条上ル町 書林 山城屋佐兵衛 |
皇都 藤井文政堂 寺町通五条上ル町 書林 山城屋佐兵衛 |
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故事 俗信 ことわざ大辞典 小学館 広辞苑 漢和辞典 学研 古語辞典 三省堂 いろはガルタ ・いろは歌 (大辞林特別ページ) 侏儒の言葉 芥川龍之介 国際日本文化研究センター 和歌データベース |
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