2020/3/2 改訂 表紙へ |
Nenshimonomou doure hyakunin issyu [picture book] 天保六年(1835年) [初版寛政五年(1793年)] 原データ 東京大学付属図書館 霞亭文庫 |
解説 どうれ百人一首は百人の狂歌師が江戸の正月を詠んだもので、半丁に四首の狂歌が記され その狂歌一首毎に挿絵を添えた年始百人一首。江戸後期の狂歌師 13丁半・挿絵 18cm。墨摺絵本。 鹿都部真顔(鹿津部とも書く)(1753~1829) は通称北川嘉兵衛。別号、狂歌堂・ 家業は江戸数寄屋橋河岸の汁粉屋で、大家を業とした。黄表紙など戯作を試み四方赤良に 師事して、数奇屋連を結成した。狂歌の四天王(馬場金埒・頭光・飯盛・真顔)の一人と 称され、狂歌師を職業化し、狂歌という名称を俳諧歌と改めた。 戯作名、 黄表紙「 翻刻と解説については椿太平氏と松尾守也氏に多々ご協力を頂きました。 厚く御礼申し上げます。 |
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(1) 年始 物申 どうれ百人一首 |
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(2) 狂歌堂 1 2どうれ百人一首 |
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(3) とし玉の春ハ。1十六武蔵野の 立て。2道中すご六の京へとてのぼる物から。 歌かるたの はつ日をむかへ。 山にも。 暦の4恵方にむきて。福寿草を笑ハ するハ。戯れるにしくものなんなかりける。 されハ五色糸に美しき 楊枝におかしきふしを添えて。柚べしの ミそじ一文字をうたふ人々。我狂歌堂 の門松を 5貝杓子のかいつけ給へるを。6 箱のうちに7鼠半切とゝもに巻納めんも あたらしう。草双紙の草むすひして。 物申どうれ百人一首と名つけ。問来る 友とちにこたへ侍るものならし はつ春 |
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(4) 鹿都部真顔 1秋の田のかりをはらふて帳面の しめかさりする宿の福藁 田原舟積 2皆人の袖や引らん子日せし 松よりたけのそだつ小娘 山東亭 3氷柱ほどはしにかゝれるうどんさへ すゝれはとくる春のひもかハ 花江戸住 4めこどもにわけてやるへき世話もなし ミなひとつつゝひらふとしをハ 藁和都年武 5さほ姫の文もて来ぬるうくひすの はつ音にとけし雪のふうじめ 山陽堂映沙 6千代かけて子の日の松のミどりあめ 三けんはりにひきのばしてん 和薬唐子 7たのしミは春待よりも酒のかん 世をあたゝかにくらすとおもへは 市川白猿 8よい春でござりますめのはかりよく 江戸をとくゐのかざり |
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(5) 石垣高伎 1わかやくといはれてうれしあら玉の 年もかゝミのかさなれる数 曲亭馬琴 2三河路やおはぎの山もむらさきの かすミのたなのをちにかゝれり 八千代春木 3諺の目に正月のしたてもの 針仕事までよいとしまふり 清藁注連縄 4黒木うる女もいはふ雑煮もち くへハおはらのはるハ来にけり 概唐芋成 5さほ姫にこそくらべちや四方山の 笑ふあハゝの三太郎月 埒明可年 6道ハたでうるもちの名のうくひすハ かふても見まくほしとなくらん 永楽通宝 7枝かはす花のいろ香をうくひすの おかやきもちか人くとぞなく 海沖名 8くミ糸の江戸むらさきハ本町の 二丁めよりや霞そめけん |
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(6) 大殿若持 1けさはるとかざる柳のいとひけハ 花も火ともす梅かかりくべ 高根雪風 2明初る春のみそらの天がいに からすとびミゆ鮹の入道 祝義家樽 3又ひとつ嘉例にくれて行としを 取て御礼ハ春に申さん 根来庵定規 4うくひすも音をはるの日も長談義 あくひましりにほけきやうとなく 自分斎下賤 5春くれハ野は紫のちりめんに 五寸もやうとミゆるさハらび 深草青人 6天神のやしろの梅にうぐひすの 声のなまりハとれやしつらん 金多丸 7春の花なかめもあかぬ子宝の ひましにそたつ此太郎月 小柄高彫 8さかりなる家を継穂の梅か枝に 匂ひひろむる花の惣領 |
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(7) 寸善舎尺丸 1梅か枝に年礼帳をかけすてゝ 留守の庵にも春ハ来にけり 一丈帯武 2あら玉のとしの初穂のかくらミこ 腰をおひねり尻をふる鈴 森羅亭万宝 3はかりなきおしへハ腹にしミわたり 去年の酔いをさますわか水 木毎花行 4鑓ならでかふろかかつく羽子板や 金箔つきの春の道中 月花永女 5ふるとしのしハをのしめにあらためて まづとそさんに口いはひせん 通牛文馬 6この春ハ恋の山住となりにけり こよミもとらず姫はしめして 育龍軒目安 7春またき室の梅かえたまされて ひらきかけたる紙入の口 末広かな女 8万歳の春まだつけぬとしのうちに とくわかやぎしうくひすのこゑ |
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(8) 柏木葉守 1ゆふべよりおきあかしたるそろばんの 玉の春をぞけさむかへける 花林堂音成 2来るはるの片手に樽のおもたせを いはふてひらく門松の魚 双六齋三賓(すごろくさい-さんぴん) 3格子先たつや霞の袖つきん かふろも見しる春の色客 魚波繁伎 4雛鶴もわたらぬ きせるにたゝく里の七草 渋木弥舎丸 5正月の十六日のたのしミハ あたへ千金百茶一斤 錦織女 6いつかたもとしのせき候いさましく ござれとこゑを春ぞちかつく 千代古道 7としことにいはふてかさる蓬莱ハ 居なからにミる名所なるらん 紀若人 8ひらの谷のふる巣を出てわか宿の つほのうちにそ来なく鴬 |
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(9) 紀長人 1かためつる氷の関もうちあけて 通れと声を春の鴬 寝牧侭也 2つれだつて恵方まいりの袖頭巾 かふりハふらぬ中と見へたり 花毛夜九 3山々に霞ほそひくいはし雲 はるやきのめの味噌をあけあけ 鼻下長 4いつかたも御慶を申あふき箱 今朝ハ名札をはるの来にけり 麦原笛成 5くれて行としの つくる小豆のむらさきのうへ 腹唐好成 6けふよりハ小川もはると思ふたら 氷りし水と結句とけたり 地曳長綱 7梅のはなはるも来たかとしりかほに むかひあふたる枝よりそさく 荷造早文 8春かせの わらひかけたる花の唇 |
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(10) 紀志丸 1としたてる室のミとり子かくべつに 今朝ハ霞のちへぢへしさよ 無智節教 2つくはねをとんほうと見む梅が香の 春ふく風におハれてそ行 思案有面 3夕べとハ障子ひとへのへたてにて 明れハさても 蔦唐丸 4青本の春ハ来にけりひとはけに 霞むゐなたの山東より 七草鳥人 5寝ころんで梅見る春のあしたかく 気もゆるゆるとおきこたつかな 刈穂庵丸 6のどかなる日をむだことにつかハしと 気もあらたまる千金の春 襠さゝ褄 7松かせもけさハしつかにふきぐみの 歌さへミやうがあら玉の春 鼈甲歯尊 8佐保姫のおなかもはるのむつきとて 霞の帯をふたえ廻しつ |
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(11) 高砂浦風 1せハしなくまハる車のとしの坂 こえてのろりとうしのはつ春 紀軽人 2ましらなく甲斐の山家のせいほとて 三本はかりもらふ毛牛房 曼鬼武 3春来れハ色を めでたくたてる松の内かな 橘赤実 4さく梅の花ござしきてうくひすへ 時分つかひをたてる春風 紀持方 5嘉例にてくふ蕎麦きりも勘定も のひてうれしき大晦日かな 千箱金持 6花ころもはるの山辺に染あけて はけやかすミをひきわたしけん 磯鴨女 7さほひめのとし玉なれやそめあけて 霞につつむ青柳の糸 井中家居 8はる霞山のかたつミ袖頭巾 目はかり見ゆる峯の桜木 |
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(12) 紅葉秋人 1明て今朝はるのくるま井くミいれん 千とせのつるべ萬代のかめ 槙本太丸 2短尺にかくまて春の酔ごゝろ これそわが身の一升の徳 透原よし酒 3わかゑひすかすミのおくの首尾もよく つり出したる春の姫鯛 山路赤土 4うつくしう文を好める梅かゝを かしくととめよ袖の春かせ 坂上照貫 5高根から霞のふとし尾をひけハ このめふき出し山笑なり 五里霧丸 6三味線のそのさほ姫もけふといへハ ねしめ静にひく霞かな 萬佐羅壁也 7千金にうるやねつけの けさハ霞と春の立ける 千代例 8若水をくむ井のもとのはつわらひ つるつるつるとすへる亀のこ |
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(13) 竹節見 1大黒のはつ子のけふの膳部にハ 千代の小松や引ものにせん 曽礼よしかね 2あまほしのかきねの竹にはるかけて しぶのぬけたる鴬のこゑ 時行氣人真以 3明ぬれハ門に舞来る鶴太夫 けふ徳わかのうらゝかな春 繁昌有才仙 4君か代のじんぎ礼智ハ神国の ひたふる鈴やしめをはるの日 振鷺亭 5のり入の年始のふミにいつハりの かきそめならぬ傾城もあり 海原沖風 6乗そめの舟にすだれをかすませて 見せぬミすしの糸の棹姫 宇和空成 7文箱のふうおしきりて明ぬれは あら玉つきのはるのことぶき 手引節麿 8山と名のり川と名のりて立あへる 春や霞を引わけの空 |
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(14) 花春人 1姉さまのお梅とともにいもとごも はやほころハす正月着物 未為成 2せハしなく寝たる夕べにひきかへて 今朝ハしつかに夜も明の春 正木桂長清 3見わたせハねこする野辺のはつ子の日 ゐたちに小松引てゆくなり 根元道人 4山里ハ苗代河豚もなかりけり たゝ鉄砲の音ばかりして 野辺広道 5梅の花じやけんちらす春雨を たとへは鬼か蛇のめからかさ 平花庵雨什 6すミた川かいこきわたるうい年の 御慶めでたくかすミこめ候 膾田造 7松の木の丸太のうしの春霞 たてるや千代もくちぬ金藏 鳴瀧音人 8あしかきのまちかきミそのあなたより よこに這出る蟹の紅梅 |
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(15) 安土繁藤 1ぢやらされて尾をふり袖のうつり香ハ 麝香猫にやあら玉のはる 播鉢植 2十八のまつハものかハ色まさる としまさかりの梅のかほハせ 生田琴彦 3春来ぬとつけのくし屋の細工ほと きを引立るうくひすのこえ 萬代数成 4やれ障子はるの霞のたてひきに 男を飾る花の兄ぶん 山崎山狸 5あらためて明れハかはる一陽の としの手つまによい玉の春 川井物集 6行としの雪に合羽を引ずりて 大道つきの尻もちの音 寶倉光 7金銀を手に持駒のいさましく 勝てかふとをしめかさりなり 軽石泡城 8猫もさかなひくや鼠のとしのくれ おはるゝほどにさてもせハしき |
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(16) 今日茂遊人 1たは(謀)かりて春へ通らんとしの関 かけ取ともをたゝきたふして 酒月米人 2うす霞ひきそめてより白さけの さか屋にまかふ春のあハゆき 烏亭焉馬 3うなバらによれる鰯のかしらより 光さしそふ初日の出かな 銭屋金埒 4ももしきやふるき軒端のしのふまて |
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